安全教育にVRを取り入れるメリット・デメリット
VR( Virtual Reality ヴァーチャルリアリティの略)技術の応用
市場に出回りかけた当初のVR機器は、現在の汎用品のような"ゴーグル型"は開発途上でしたので、箱の中を覗き込む形のものの他に、周囲360°ディスプレイに囲まれたシミュレーター様のもの、プラネタリウムのように天球型プロジェクションするものが主流で、さらにはディスプレイに囲まれた空間に設置された3軸遊動するシートに自分が座って動き回るものも出てきました。しかしながら、"現実に近づけば近づくほど"高額で大型の設備が必要となるジレンマがありました。たしかに人々を魅せるにはそれなりの"再現度"が求められ、かつ"リーズナブル"でないと誰も手が出ませんでした。そこで、このジレンマとともに画期的な進化を遂げたのが、ゲームへの応用でした。
当初のゲームといえば、目の前にディスプレイ表現されるドット画と数ビットのチープな単音の組み合わせ。しかしこれでも立派な"創造された非現実"を表現できたので、人々は十分のめり込んで楽しめました。ゲームはどんどん進化し、いよいよ"動作""肉声""景色"などが高度に再現されるようになると、すでに1つのディスプレイでは収まりきらない情報量を求められるようになってきました。つまり、"想像された非現実"が"現実"に近づいたことで、さらに現実に近づく欲求を呼び起こし、エンジニアたちは"非現実を現実に再現する技術"を競うようになってきたのです。こうして、いわゆる"ゲームの世界に入りたい""好きなキャラクターを自分に置き換えてコントロールしたい"などの"ゲーマーの夢"を叶えたいという究極の非現実的欲求によって生み出されたのが、「仮想空間に現実を再現する技術=VR技術」です。
この技術は、ディスプレイを多く並べたようなシミュレーターなどとは異なり、主に自分の動作(視点)とディスプレイの視点(角度)を同期させることによって、まるで非現実空間の中を自由に見て回ることができるような錯覚の一種を活用したものです。細かな技術や音声については省略しますが、自分の見たいものを自分の動作によって見ることができるだけでも、十分に"非現実空間の中に入りたい"という欲求を満たすことができるため、非常に画期的なビジネスモデルとして注目され、次々に、上空・水中・宇宙空間などの"見てみたかった非現実空間"や"現実にはあり得ない"状況を再現できるようになってきました。
そして、"実際には体感できない事象"の一つに、"災害・事故"が当てはまり、これを再現することによって"教育に転換"しようとして生まれたのが、いわゆる「安全教育VR」です。
安全衛生教育にVRを取り入れる場合のビジネス的メリット・デメリット
待望のVR技術を応用した安全衛生教育ができるようになるとあれば、安全衛生関係者をはじめとして喜んで使わないはずはありません。しかしながら、実際に使用してみると、意外な事実に当たります。ここで、災害事故再現シナリオに没入できるなどの所感的特徴のほかに、知っておかねばならないコスト面や運用面などのビジネス的メリット・デメリットについて、表1の通りまとめてみましたのでご参考ください。
表1:「VRを使った安全衛生教育のビジネス的メリット・デメリット」 2022.3現在 当所調べ
| 主なビジネス的メリット・デメリット | |
| コスト面 | メリット ・宅急便発送可能なため、受講者の旅費を節約できる。 ・レンタルなら初期費用を抑えられる。 ・買取ならソフトウェアを5年で償却できる。 デメリット ・買取なら初期費用が高額(およそ50万円〜)。 ・別途保証料がかかる(過失保証なし、修理代別)。 ・経年とともにコード類を含む消耗品に費用がかかる |
| 運用面 | メリット ・容易に持ち運びできる(キャリーケース以下)。 ・100Vコンセントがあればどこでも使える。 ・操作が簡単(誰でもマニュアルに沿えばできる)。 デメリット ・コンパクトなので盗難に遭いやすい。 ・電源(充電・電池)が無いと使えない。 ・一人ずつ実施するため待ち時間が長くなる。 |
| ユーザー(講師) | メリット ・メンテナンスフリー(アップデート等も不要) ・操作が簡単なため講師を育てやすい(資格不要)。 ・一人ずつ実施するため3密を回避できる(清拭は必要)。 デメリット ・故障させた時の対応に困る(賠償責任を伴う場合もある)。 ・受講者に怪我させた場合の責任がある。 ・費用対効果の評価に困る。 |
VRの種類による実用的メリット・デメリット
安全衛生教育VRには、いくつか種類があり、それぞれの実用面においてメリット・デメリットがあります。これらの特徴を踏まえ、教育目的に適う種類のVRを選定したり、デメリットを補い合ったり、上手く組み合わせてご活用頂ければと思います。ここで、"実用的メリット・デメリット"について、表2の通りまとめてみましたのでご参考ください。
表2:「VRの種類による実用的メリット・デメリット」 2022.3現在 当所調べ
| VRの種類 | 主なビジネス的メリット・デメリット |
| CGタイプ (トラッカー) |
メリット |
| CGタイプ (3Dカメラ) |
メリット ・人間と同じような滑らかで細やかな動きに近いCG再現 ・手指は自由に動作可能(指の動きも再現可能) ・立ち位置や動作の速さもコントロール可能 デメリット ・エラーにより、CG位置にズレ・ブレが生じやすい ・近くに他人がいたり太陽光が入ると実施困難(混同・干渉) ・行動は3Dカメラ(センサー)の範囲内に限られてしまうメリット ・容易に持ち運びできる(キャリーケース以下)。 ・100Vコンセントがあればどこでも使える。 ・操作が簡単(誰でもマニュアルに沿えばできる)。 デメリット ・コンパクトなので盗難に遭いやすい。 ・電源(充電・電池)が無いと使えない。 ・一人ずつ実施するため待ち時間が長くなる。 |
| 実写タイプ (360°カメラ) |
メリット ・現実そのものであるため、視野や音声に違和感が無い ・実写にテキストや画像を浮かび上がらせることができるため、 写真付きマニュアルよりわかり易い教材を作成可能 ・シナリオやコンテンツ作成が容易(撮り直しで済むなど) デメリット ・空想上の建築物、機器設備、人物、生物などは再現不可能 ・墜落や爆発などのエネルギーが大きな災害は再現が困難 ・立ち位置や動作の速さはコントロール困難 |
いかがでしたでしょうか。お察しの通り、"実際にやってみないとわからない"ことが多いかと思います。展示会のような不特定多数を相手にするような商売になるとさらに悩み事は多くなるかもしれませんが、ある程度限られた受講者を対象とする場合は、これらのようなメリット・デメリット情報がお役に立てるかと自負しております。
もし安全衛生教育がマンネリ化されておられましたら、一度VR機器を試されてみる価値は十分にありますので、是非とも導入をご検討ください。
